2020年11月19日に設立された「超党派 格闘技振興議員連盟」が約2年ぶりに開催され、新日本プロレスからは大張高己代表取締役社長、菅林直樹取締役会長、永田裕志選手が出席した。
プロレス界からは、株式会社 Cyber Fight(DDT)の高木三四郎取締役、高橋晃執行役員、東京女子プロレスの甲田哲也事業部長、プロレスリング HEAT-UPからは兼平大輔選手、酒井博生選手。
格闘技界からはRIZINの榊原信行CEO、笹原圭一広報局長、日本修斗協会の坂本一弘 副会長兼代表代行、One Championship の池本昌煇プロデューサー、DEEPの佐伯繁代表、RISEクリエーションの小野誠司代表、一般社団法人全日本フルコンタクト空手コミッション広報の吉岡恒夫氏らが顔を揃えた。また、参議院議員で、元格闘家の須藤元気氏が司会進行を務めた。
会の初めに、馳浩会長が石川県知事となったことで「超党派 格闘技振興議員連盟」の会長を退任したことから、新会長として自民党の萩生田光一政務調査会長が就任したことが発表され、就任の挨拶を行った。
このあと、新日本プロレスの大張社長がプロレス界を代表してマイクを握り、業界からの要望を提出。まず、Cyber Fightと東京女子プロレスからの2つの要望を読み上げたあと、新日本プロレスからは質問が一つ、要望が二つ提出された。
●質問 :「“大声の定義”に関して」
●要望①:「100パーセント収容のプロレスの会場での、全面的な声出し解禁」
●要望②:「自治体、会場への“制限緩和”の浸透のお願い」
まず、大張社長からの質問として出されたのが「大声の定義」だった。
現状、コロナ禍におけるイベントの開催制限、施設の使用制限に関する「大声」は、
「観客等が(ア)通常よりも大きな声量で、(イ)反復・継続的に声を発すること」と定義されている。
また、「大声」の具体例として
・「観客間の大声・長時間の会話」
・「スポーツイベントにおいて、反復・継続的に行われる応援歌の合唱」
※例外として、「得点時の一時的な歓声等は必ずしも当たらない」とされている。
現在のプロレス会場において、大張社長は「とっさに声が出てしまう、声が漏れてしまう」ケース以外は、お客様が声援を自粛している状態であると説明。
このあと質問として出されたのが、「大声ではない声」の定義。たとえば、選手名を応援する「ナガタ! ナガタ!」といった選手コールは、「反復・継続的に行われる応援」であり、「大声」に該当すると思われる。
だが、たとえば故・アントニオ猪木さんのかけ声「1、2、3、ダー!」といった決め言葉や、「ナガター!」「タナハシ!」といった“単発”で“一時的に発する”発声は「(定義上の)大声に当たらないのでは」という質問が投げかけられた。
続いて、大張社長は“要望”として、6月に産総研がJリーグを題材に発表した「スポーツイベントの声出し応援に関する新型コロナウイルスの感染リスク評価」を題材に挙げた。この研究によると、会場使用100パーセント、4万人の収容で、不織布マスクを正しく着用して、声出しアリのケースで実施したところ、「会場全体の感染リスクの上昇は2割程度」と発表されている。
大張社長は「声出し時の感染リスクは2割程度」という部分、「4万人も会場に集めることは新日本プロレスでもめったにありません。絶対数としてのプロレスの動員規模は、その数十分の一です」と語り、「上昇率と絶対数としての規模も踏まえ、100パーセント収容のプロレスの会場においては、“全面的な声出し解禁”はできないでしょうか?」と要望を挙げた。
そして、最後の要望として「自治体、会場への“制限緩和”の浸透をお願いしたい」と語った大張社長。
その一つ目の例として「収容率の制限は大声無しなら、100パーセント収容というルールがありますが、そういった政府が定めたルールを改めて浸透させて頂きたい。新ルールである大声アリのエリアは50パーセント収容、大声無しの場合は100パーセント収容、コレは併存できますよ、というルールも認めて頂けない会場や自治体がある」と現状を訴えた。
二つ目の例として挙げたのは「会場における個人の連絡先の把握」に関して。
「公的機関による濃厚接触者の追跡は、もはや行われていない」にも関わらず、「いまだに多くの会場で連絡先の把握が求められている。個人情報を扱うのは非常にセンシティブなため、負担もかかる」とコメント。「事業者並びに個人の自由を制限するときは、みなさん強くおっしゃると思いますが、“制限を緩和”するときも、それが浸透するように各自治体、会場に働きかけをぜひしてほしい」と要望した。
この質問、要望に対して、内閣官房 新型コロナウィルス等感染症対策推進室の担当者からの返答は…、
●質問 :「“大声の定義”に関して」
「(大声の定義は)それぞれの産業界ことに対応が異なっている。音楽業界、Jリーグとか、それぞれのイベント開催において、どんな形で行われているのか? いろいろ教えて頂いており、『どういう形であれば、大声に当たらないか?』を専門家を入れて相談しながら、対話しているところ。先ほど、言われた個々の事例に関しては、後ほど相談をさせて頂いて、『どういった場合に(大声に)当たらないのか?』ということを一緒に検討できればと考えている」とコメント。
●要望②:「自治体、会場への“制限緩和”の浸透のお願い」に関して
「ご指摘の通り、(来場者の連絡先の把握)を求めることは現在はしていません。厚労省の運用で、濃厚接触者の特定を現在は求めていませんので、こういったイベント開催において、来場者の連絡先を求めていることは必要ない、ということで(各自治体に)通知をしています」と語り、また「自治体で運用方法が違っているのではないか?」という指摘に関しては、「我々、基本的対処方針の事務連絡の内容に関しては、詳細に都道府県に対して説明会などを行って理解を深めるように努めているが、もしそういった県において運用の違いがあれば、ぜひコロナ室、スポーツ庁にご連絡ください。我々は県とも連絡ができますので。そういた事例がありましたら、相談に乗って対応させていただきたいと考えています」とコメントした。
●要望①:「100パーセント収容のプロレスの会場での、全面的な声出し解禁」の見直しに関して
「これについても、まず現在の体系的な対策でもって、第8派をぜひ乗り切りたいと考えてます。一方、平時に向けた取り組みとして、科学的なエビデンスに基づいて見直しを図っていきたいと考えておりまして。ぜひ産業界の方には、運用の実績とイベントを行うにあたって、どういう対策が講じられていて、安全に開催されているのかをぜひ教えてもらって、それを元に検討していきたい」と返答
このあと、司会を務めた須藤元気氏から「選手の立場として、ご意見ありますか?」と振られて、永田選手が質問に立った。
「やっぱり我々、選手だけではなく、お客様も『声を出してプロレスを観たい』、という声があってですね。そこがやっぱり海外の主流として、もうマスクしている国があまりありませんので、なぜ日本だけそういう風になるのか? という部分がどうしても我々としては疑問で、そのへんのところを教えて頂ければ」と質問。
これに対して、厚生労働省から、現在のマスク着用のルールが説明されたあと、「今後、コロナの感染状況をみながら、コロナの位置付けというものは段々変わってくると思います。私ども先日、感染症法という法律を改正しましたが、この改正の時に、まず国会から言われていることが、いまコロナは2類相当だとよく言われますけども、コレを5類相当にしようと言われています。私どもも科学的な根拠を持ちながらきちんと検討していって、最終的にはできるだけ早く5類の方にもっていくことを検討していますので、それに基づいてやっていくと、マスク(着用)の扱いも当然変わってくると思っていますので、いましばらくこの状況を続けさせて頂ければと思います」と返答。
この他、格闘技団体からも要望や提案など、さまざまな議論が飛び交った「超党派 格闘技振興議員連盟」。
最後に参議院議員・榛葉賀津也氏が、「先ほどRIZINの榊原社長がおっしゃったように何か積み上げていって結果を出さないと意味がないと思いますので。ぜひ具体的な要望があったらお申し付け頂いて、具体的な結果と成果を出す議員連盟でありたい」「シッカリと団体のためになることをやっていきたい」と締めくくって、2度目の会合は幕を閉じた。