ダブルメインイベントⅡ(第8試合)はIWGP USヘビー級選手権として王者のケニー・オメガとクリス・ジェリコが激突。ジェリコは12.11福岡でケニーを急襲。その翌日の会見では、今度はケニーがジェリコにお返し。遺恨を深めた両者はノーDQマッチ(反則裁定なし)で対峙することに。世界が注目する世紀の一戦、その結末は果たして?
ジェリコは電飾で光輝くコスチュームをまとって入場。ケニーはエジプト神話のアヌビスのような出で立ちで、ヤングバックスを引き連れてリングイン。
ゴング前、ジェリコはケニーに中指を突き立てる。そして、ケニーがヤングバックスと抱擁を交わしていると、その背中を奇襲。あわてて、ヤングバックスとヤングライオンが両者のあいだに割って入る。ここで、開始のゴング。
ゴングと同時に両者は打撃戦。ケニーはフロントキックでジェリコからダウンを奪うと、馬乗りになってパンチを連打。さらにコーナーを背負わせて逆水平チョップ。だが、ジェリコも顔面かきむしりから応戦。ケニーに逆水平チョップを見舞っていく。
ケニーも逆水平チョップを返し、串刺し攻撃を狙うが、ジェリコが迎撃。だが、ケニーは負けじとカウンターのフランケンシュタイナーを仕掛ける。しかし、ジェリコはこらえてウォールズ・オブ・ジェリコへ。ケニーはあわててロープエスケープ。
ケニーはうまくジェリコを場外に投棄するとスライディングキック。その足をジェリコが捕らえるも、ふりほどいたケニーはもう一度スライディングキック。そして、鉄柵の外に吹き飛んだジェリコに対し、スワンダイブ式のプランチャを放つが、ジェリコは寸前で回避。すると、ケニーはそのまま机に激突。ジェリコは場外でケニーにウォールズ・オブ・ジェリコ。
海野レフェリーがリングに戻るよう促すと、ジェリコは技を解いてレフェリーに張り手。さらにヤングライオンにも張り手を見舞い、ウォールズ・オブ・ジェリコを決める。すると、回復したケニーがフロントキック。そして、ジェリコにイス、モニターを投げつけていく。
両者は場外で乱打戦を展開。ジェリコは「アルファー!」と雄叫びを上げるが、ケニーは机を投げつける。そして、ボディスラムから机をジェリコの上に載せると、鉄柱を登ってダイビングフットスタンプを敢行。
ケニーはジェリコにブレーンバスターを狙うが、これは逆にジェリコが投げ返す。ケニーはカウント19でリングにギリギリ生還。
エプロンサイドのケニーは、ジェリコを鉄柱に投げつけ、エルボーを連発。さらにスワンダイブ攻撃を狙うも、これはジェリコが三角飛びのドロップキックで迎撃。ケニーが場外に落ちると、ジェリコはリング下から机を取り出す。そして、場外に設置すると、ケニーをパワーボムで叩きつけようとするが、ケニーは暴れ回る。すると、ジェリコは机ではなく、場外フロアに叩きつける。
ジェリコはイスを三脚、リングに投げ入れる。そして、リングサイドカメラマンのカメラを奪うとケニーと客席を撮影。怒りのケニーはパンチを繰り出すも、ジェリコも応戦。そして、ケニーをリングに投げ入れ、トップコーナーからダイビングエルボー。
ジェリコはイスをコーナーに設置すると、ケニーを投げつけようとする。しかし、ケニーはこらえて、逆のコーナーにジェリコを投げつける。続く串刺し攻撃をかわしたジェリコは、ミサイルキックをヒット。
ケニーは張り手を連発。さらに逆水平チョップを見舞うが、ジェリコはエルボーでダウンを奪い、ライオンサルトをお見舞い。さらにケニーを踏みつけ、雄叫びを上げながらマッチョポーズ。
だが、ケニーも負けじとカウンターのフランケンシュタイナー。さらにラリアットでジェリコを場外に落とし、ノータッチ式トペ・コンヒーロをヒット。ケニーはジェリコをリングに戻すとコタロークラッシャー。さらに蒼い衝動のように抱え上げ、ジェリコの後頭部をヒザに打ちつける。
ケニーは一気にはVトリガーを狙うも、ジェリコはウォールズ・オブ・ジェリコで切り返そうとする。これをケニーが丸め込むが、ジェリコはカウント2でキックアウト。すると、ケニーはその場飛びのVトリガー。そして、ドラゴンスープレックスの体勢に入るも、ジェリコはサムソンクラッチの要領で切り返してウォールズ・オブ・ジェリコへ。ケニーは技にかかったまま必死にエプロンに逃げ、リング下からスプレーを取り出し、ジェリコの顔面に噴射。ジェリコは悲痛な声を上げて昏倒。そして、ケニーはスプレーを自身の頭、脇、股間に噴射し、気合を入れる。
ジェリコはレフェリーを突き飛ばし、ケニーに激突させる。そして、ケニーのタイツを引っ張り、コーナーのイスに打ちつける。さらにジェリコはケニーをイスに二度打ちつけ、場内に中指を突き立ててアピール。
ジェリコはケニーの頭部をイスに叩きつける。そして、コーナーに寝そべるポーズを見せて挑発。流血したケニーに対し、ジェリコは鋭いエルボー。そして、ケニーの頭部にパンチを打ち下ろす。ケニーもパンチを返してヒザ蹴り。そしてすばやいドラゴンスープレックスを二連発。
ケニーは三発目を狙うが、ジェリコは切り抜ける。すると、ケニーはニールキックから一気に片翼の天使を狙うが、ジェリコはパンチを落として回避。だが、ケニーはもう一度ドラゴンスープレックス。しかし、ジェリコもイスでケニーの頭部を一撃。
ジェリコはイスを手にすると、ケニーの背中に乱打。さらにセカンドロープからイス攻撃を見舞う。ジェリコは新しいイスを手にし、トップコーナーに登るが、ケニーがドロップキックで妨害。そして、コーナー上のジェリコにVトリガーを見舞うと、ジェリコは場外に落下し、机が真っ二つに。
ケニーは自らを鼓舞するように頭から水を被ると、ジェリコをリングに戻す。そして、ジェリコの顔面にヒザを連発し、勢いをつけてVトリガー。さらにダブルアーム式のパイルドライバーを決めるが、ジェリコはカウント2でキックアウト。すると、ケニーは狙いを定め、Vトリガーをヒット。そして、ここを勝機と見たケニーは片翼の天使を狙うが、ジェリコは前方回転エビ固めの要領で切り返し、ウォールズ・オブ・ジェリコへ。ジェリコは凄まじい角度で絞め上げるが、ケニーは必死にロープエスケープ。
ジェリコはコードブレイカーを狙うも、切り抜けたケニーはVトリガー。さらに追撃のVトリガーを決め、ついに片翼の天使に成功。しかし、ロープ近くだったため、ジェリコはエスケープ。
ケニーは右手の人差し指を突き立てると、トップコーナーへ。しかし、ジェリコが妨害。そして、ジェリコはケニーに対して雪崩式フランケンシュタイナーを狙うが、ケニーはうまく回避し、ジェリコの顔面をコーナーに激突させる。
ケニーはエルボー、ヒザを食らわせ、カミカゼからのムーンサルトプレス。これをジェリコがかわすと、ケニーはうまく着地する。しかし、ジェリコは間髪入れずにコードブレイカー。だが、ケニーはカウント3寸前でキックアウト。すると、ジェリコはイスをケニーに振り下ろし、ライオンサルトを狙うが、ケニーはその背中にイスを投げつける。そして、ジェリコを肩車で捕らえると、イスの上に片翼の天使を炸裂。ついにケニーが3カウントを奪取し、4度目の王座防衛に成功すると共に、世界的ビッグネームとの世紀の一戦を制した。
試合後、ジェリコは介抱しようとしたヤングライオンを突き飛ばし、首を押さえながら一人で退場。
ケニー「今日はドリームマッチとして注目されていたが、それもこれにて終了だ。クリス・ジェリコとの、世界へ向けた一戦がな。しかし、この試合に向けたすべてに対しては感謝するぜ、クリス・ジェリコよ。彼が作り上げてきた素晴らしいストーリー、そしてプロモーションの中で言ってきた、自身が最高でスーパースターであることを、このリング上で示せたと思う。まさにミスター・メインイベントにふさわしい闘いだった。さすがはレジェンドであり、メガスター、そしてミスター・メインイベントだ、お前は。しかし、これだけで終わったとは思っていない。自分自身の夢、そしてその夢は悪夢、恐ろしさの中で渦巻いていくものだということがわかった。そして、この試合を終えて、一つの大きなことを学んだ。それはほかではなかったこと。俺のホームはここ、ニュージャパン。俺はここで働いてるし、それが終わったわけじゃない。俺の仕事はチャンピオンであり、それは終わってなんかいない。俺は人生を懸けてトップファイターの中で生き残っているんだ、クリス。ベルトを落とすことはできないし、ここを離れることもできない。そしてこれが最後の試合でもない。俺の遺産はニュージャパン・プロレスリングで引き継がれていく。サンキュー・ベリーマッチ。何か質問はあるか?」
--東京ドームのど真ん中、まさに世界中が注目する中で、去年とは全く違うインパクトを残したと思うんですけど、試合を終えて今の感触はいかがですか? 去年との違いは?
ケニー「去年の試合はスペクタクルのなかでも最高にスペクタクルな闘いをしようと思っていた。美しさや持てる業をフルに使ったテクニカルで、ニュージャパンがナンバーワンであるという、すなわちケニー・オメガがいるところこそが、世界を変えるということを示したい闘いだった。しかしクリス・ジェリコとの闘いは、言葉のぶつかり合いであり、頭脳のぶつかり合い。そして夢のぶつかり合いであり、こうしたいという願望のぶつかり合いだった。お前のプロレスに対するアイデアが、俺自身のものとは異なるものであることがわかった。クリス・ジェリコはすでにレジェンドになっており、その名声はこれからも残っていくだろう。自分は自身が最高であることを去年1年間で証明してみせた。2017年だけで、歴史に残る試合を何試合もして見せてきたわけだからな。今日ここで自分たちのアイデアがぶつけ合うことができた。クリス・ジェリコよ、俺は昨年すでに素晴らしいプロレスリングを見せつけることに力を注いだが、今年は本当の意味での闘い、そして俺の強さを見せる闘いで、それを見せることができたと思う」
--ケニー・オメガ選手とクリス・ジェリコ選手は同じカナダ・ウィニペグ出身という部分もあると思うんですけど、リング上で対角線に立ってみて、なにかこう、同じ部分を感じたところはありますか?
ケニー「ウィニペグは本当にとても小さな町だ。小さな町で生まれ育つと、大きな夢を持つなと教えられるところがある。その町に溶け込んで、普通であれと教えられて育ってくる。そんな中でケニー・オメガとクリス・ジェリコは、同じように闘ってきたし、苦しんできた。そして一方は何億というカネを動かす王国で、大金を生み出すロボットとして育った。それがクリス・ジェリコだ。それに対して俺は、自身のアイデア、自身の夢、オリジナリティーを生かすことで自分の道を切り拓いて、そこを歩いている。そしてニュージャパン・プロレスリングは、俺にそれを許してくれた。なにがケニー・オメガスタイルかって言えば、すべて自身の発想でやってきたということだ。一方、クリス・ジェリコスタイルっていうのは、ビンス・マクマホンというとてつもない力を持った者の下でやってきた“商品”といってもいだろう。もちろんどちらも決して簡単なことではない。同じように闘ってきたけど、歩んでる道は異なっている。それはそれでリスペクトしているよ。アメリカで億単位の大金が転がっているけど、だからといってアメリカが最高だというわけじゃない。だけど、俺にはニュージャパンの方がいいんだ。ここでは自分の思うような闘いができるし、最高の闘いができる。だからこそ、俺はここにいるんだ」
--このIWGPヘビー級王座は、ケニー・オメガ選手が手にしてから、まだ1度も王座は移動していません。その点については、今後、このベルトの価値というところではどう考えてますか?
ケニー「今日、この試合に勝ったことでIWGP USベルトについても、一つのことを証明できたと思う。それは(新設されてから)1年もたってないこのベルトで、年間最大の舞台であるトーキョードームのメインイベントが務まる価値のあるものだということだ。クリス・ジェリコはUSヘビー級王座を選んだわけじゃない。彼はケニー・オメガを選んだんだ。レスラーがベルトの価値を築く。そして、レスラーが団体を押し上げる。すべてはそこにある。そして(※ベルトを指して)ここにある。自分自身が最高、最強のレスラーであることを今日、知らしめることができた。今、オカダとナイトーが闘っている。IWGPヘビー級がこの世で最高に権威があるベルトだというのなら、それを彼らに証明してもらいたい。あのべルトがメインイベントに選ばれたんだからな。俺は闘いで証明したぞ。このベルトには明日があるってことをな。このベルトには、俺の試合、ベストバウトマシンが詰まってるということと、それを見たいならこのベルトを選んだ方が賢明だということをな。文句があるヤツは、勇気を持ってぶつかって来い。俺を倒せばいい。それより優れていると見せつければいい。なんで誰もそうしてこないんだ? 俺に挑戦してきて、俺を倒すことに成功すれば、俺より素晴らしいということが示せるんだからな。だけど、俺は誰よりも運動神経がいいわけでもないし、誰よりも努力しているとも思わない。しかし、ほかの誰よりも大きくて強いハートをここに持っている。そして情熱もな。俺のその情熱というのは、ハングリー精神からくるものでもある。そして、それが俺をグレートな段階へと押し上げる。数あるアイデアの中で俺が選んだプロレスリングに対するアイデアが、この業界の未来へいざなっている。そして、このベルトがナンバーワンに運んでいってくれる。いま闘ってるナイトーとオカダ。俺に(彼ら2人は)どうかと尋ねられたなら、『ほかにあるのかと言われたら、その通りだ』と答えるだろう。俺以外となれば、あれが俺以外に残された最後のカードだ。そうじゃないっていうなら、彼らには俺以上の試合をして、それを証明してくれることを願うよ。俺はこのベルトとともに、この団体を未来に運んでいく」
--2018年、幕開けの1・4東京ドームでレジェンドであるクリス・ジェリコを超えました。今年、ケニー・オメガ選手はどんな存在を目指しますか?
ケニー「今年、また(新日本は)アメリカに戻る。そしてそれは、去年よりも大きな会場だ。これから何度もアメリカに進出するのなら、このニュージャパンという大きな船には船長が必要だ。そうなったなら、俺を船長にすべきだ。もちろんIWGPヘビー級王座が俺の目標だ。だけど、それ以上に重要なのは、この団体を真の意味で世界規模にすることだ。そして、それができるのは俺しかいないと思っている。それを応援してくれる者もいれば不安に思う者もいるだろう。それが日本であれニュージーランドであれ、UK(イギリス)であってもどこでも、俺は関係なく、この団体を大きくできるのは俺しかいないと思っている。そう、俺だけなんだ。だから俺にハンドルを持たせてくれ。俺に舵を取らせてくれ。そして一緒に走っていこう。ニュージャパンをさらに大きくするために。輝ける未来に向かって。俺が先頭を切らせてほしい。この団体をナンバーワンにするために。そしてそこに連れて行ってあげよう。ということで、グッバイ&グッナイト……Bang!」
※ジェリコはインタビュースペースに姿を現すと、目につく物全てを蹴飛ばし、手に持ったベルトを叩きつけたりと大荒れ。
ジェリコ「オマエら、何が聞きたいんだ!? あ!? 聞けよ、何でも答えてやるから!」
──世界が注目する中でのケニー・オメガとの一戦、戦い終えて今、どんな感触、感想をお持ちですか?
ジェリコ「どうだったと思う? どんな気持ちだったかだと!? 考えてみれば分かるだろ!? 日本でこれまでで最高の試合ができたかもしれないが、自分は負けてクソみたいな気分だ。ここはケニーのホームだった。観客も全くフェアじゃなく、俺にブーイングを飛ばしてきた。しかも俺が負けて喜んでいたじゃねぇか。注目の試合? そんなのどうでもいい。『これが日本か!?』それが感想だ」
──去年の1・4ドームに比べて、明らかに多くの外国人観客が立ち上がってジェリコ選手に声援を送っていました。そこについては?
ジェリコ「1人1問だ! 誰か他の記者が質問しろ! 欲張るな!」
──試合中に冬木弘道さんのパフォーマンスをしていたのは?
ジェリコ「冬木は真の日本の戦士だからだ。彼こそ天才であり、プレスやファンのことを気にせず自分のことだけをやり遂げた人だった。彼を尊敬しているし、その思いからアレをやったんだ」
──WWEの日本公演では日本のファンはあなたに大声援を送っていたと思います。「日本のファンは変わってしまった」と感じたということでしょうか?
ジェリコ「そんなことは関係ない」
──日本にはまた戻ってくるのでしょうか?
ジェリコ「それはオマエには関係ない。ノーコメントだ。……今日、この試合がレッスル・キングダム史上最高の試合だったはずだ。ものすごく計算されていて、観客もエキサイトしていて、バズりまくった。そしてこれが新日本プロレスを次のレベルに押し上げたことだろう。ブレイクスルーになったはずだ。それを、ケニー・オメガとクリス・ジェリコが、アルファVSオメガが実現させたんだ。今日、負けはしたが自分自身のパフォーマンスに恥ずべき点は一切なかった。誇らしく思うし、俺たちは素晴らしい試合を見せられたと思う。そして新日本プロレスを世界的に次のレベルに押し上げたことをすごく誇りに思っている。観客動員数もこれまでにない大きな数字を叩き出したと聞いている。それも、アルファVSオメガがレッスルキングダム12で実現したからだと思う。しかし今日の試合に負け、日本のファンのリアクションを見て、明日日本を発って、もう二度と戻っては来ないだろう」