7勝1敗1分=15点でAブロック1位になった棚橋と、6勝3敗=12点でBブロック1位になった飯伏が、『G1』優勝を懸けて激突。なお、2人は昨年の公式戦でも当たっており、そのときは飯伏がカミゴェで棚橋を撃破している。
飯伏のセコンドとしてゴールデン☆ラヴァーズの盟友であるケニーが登場。一方、棚橋のセコンドには“同日デビュー”(1999年10月10日)の柴田勝頼がつき、ロープを開けて棚橋をリングへ招き入れる。
試合開始のゴングが鳴ると、場内が割れんばかりの大歓声に包まれる。そんな中、棚橋がヘッドロックからショルダータックルを浴びせるが、飯伏がすぐに立ち上がり、ミドルキックをお見舞い。
しかし棚橋は、カウンター低空ドロップキックで飯伏をダウンさせる。そして、トライアングルスコーピオンを仕掛けるが、飯伏は完全に技が極まる前にロープエスケープ。
そこから飯伏がカウンターレッグラリアットで逆襲し、パワースラム、ライオンサルトへ繋ぐ。そして、ドロップキックで棚橋を場外へ落とすと、三角飛びでコーナーへ飛び乗る。その直後、棚橋がエプロンへ上がって低空ドロップキックを放つが、飯伏がジャンプでかわし、そのままボディへフットスタンプを食らわせる。
だが、棚橋は飯伏が放ったカウンターミドルキックを2連続で耐え、3発目をキャッチしてドラゴンスクリュー。そして、串刺しドロップキックで追い討ちをかけるが、直後に飯伏が背中へフットスタンプを落とす。
それでも棚橋はショートレンジドロップキックで逆襲。すると飯伏は槍投げを狙うが、棚橋がスリングブレイドへ切り返す。
さらに棚橋が串刺し低空ドロップキックで飯伏に追撃し、続いて両者がエルボー合戦を展開。そして、棚橋が太陽ブローから膝へトーキックを浴びせる。
すると飯伏は、カウンターフロントハイキックで流れを変え、トップロープをずらして棚橋を場外へ落とそうとする。それでも棚橋はロープを掴んで逆上がりを見せるが、飯伏が背後から捕獲し、変型パイルドライバーで突き刺す。
しかし棚橋は、グラウンドドラゴンスクリュー2連発で巻き返し、テキサスクローバーホールドで捕獲。そのまま急角度で絞り上げるが、飯伏は辛うじてロープへ手を伸ばす。
だが、棚橋はロープ越しのドラゴンスクリューで飯伏を場外へ追い込み、ニュートラルコーナー最上段からボディアタック式ハイフライフローをお見舞い。
これで大ダメージを負った飯伏だったが、カウンターフランケンシュタイナーで逆転。これで棚橋が場外へ落ちると、トップロープへ飛び乗り、ラ・ケブラーダを敢行する。
続いて飯伏は、スワンダイブミサイルキックで棚橋を吹き飛ばす。そして、雪崩式攻撃を仕掛けると、棚橋が張り手を見舞ってエプロンへ落とす。ところが、直後に飯伏がトップロープへ飛び乗り、雪崩式フランケンシュタイナーで投げ飛ばす。
飯伏の攻勢は続き、ハーフネルソンスープレックスホールド。そして、カミゴェの体勢に入るも、棚橋が回避して丸め込む。だが、飯伏も負けずに低空ジャンピングニーアタックで挽回。
満員の大観衆が両者へ大コールを送る中、棚橋がラストライドを逃れて張り手を食らわせる。すると、飯伏の表情が変わり、強烈な掌底を連発。さらに、フロントハイキックで棚橋をニュートラルコーナーへ追い込み、無造作に蹴りを連発して行く。
これを海野レフェリーが止めると、その隙を突いて棚橋が張り手で反撃。すると、飯伏は張り手連打で報復に出るが、棚橋が鬼気迫る表情で前進し、張り手合戦が勃発。2人がエキサイトし、ノーガードで激しく打ち合う。ここは棚橋が競り勝つも、飯伏はすぐにショートレンジラリアットで逆襲。
ダブルダウンを挟み、2人はエルボー合戦を展開。そして、飯伏が強打で押し込むが、棚橋はエルボースマッシュ乱れ打ち。それでも飯伏は掌底で挽回するが、棚橋がハンマースルーを切り返し、その場飛びスリングブレイドでなぎ倒す。そして、ダルマ式ジャーマンスープレックスホールドで3カウントを迫るも、カウントは2。
次に棚橋はコーナー最上段からハイフライフローを繰り出すが、飯伏が両膝を立ててブロック。これで両者へ向けた大コールで場内が騒然となり、飯伏が棚橋の背後にボマイェを食らわせる。
続いて飯伏は、強烈なムーンサルトダブルニーと槍投げで棚橋に追い討ち。さらに、セカンドロープに乗ってエプロン上の棚橋を引っこ抜き、ジャーマンスープレックスホイップで叩きつける。そして、シットダウン式ラストライドでフォールするも、棚橋はギリギリでクリア。
ここで飯伏は右膝のサポーターをずらしてカミゴェを放つが、棚橋がかわしてスリングブレイドを狙う。だが、今度は飯伏が回避し、クロスアームジャーマンスープレックスホールドで逆襲。
そして、そのまま両手のクラッチを離さずにカミゴェに行く。これを棚橋が回避し、ネックツイスト2連発で挽回。そこから飯伏がブレーンバスターの体勢に入ると、棚橋が張り手をお見舞い。すると飯伏も張り手を返してハイキックを繰り出すが、棚橋が回避してドラゴンスープレックスホールド。
さらに棚橋は、うつ伏せ状態の飯伏をハイフライフローで押し潰し、ボディアタック式ハイフライフローで追撃。そして最後は、(正調)ハイフライフローで飯伏を沈め、3年ぶり3度目の優勝を飾った。
──『G1 CLIMAX』を戦い抜き、3度目の優勝、おめでとうございます。
棚橋「ありがとうございます!」
──今のお気持ちは?
棚橋「(※しばらく息を整えて)今まで、苦しんだ分……苦しんでない! 苦しんでない! 楽しんで、喜んでやってきたけど、結果が出なかった分、今日はいつもより、倍うれしいです」
──結果が一つ出たこの『G1 CLIMAX』、改めて振り返って、いかがでしょうか。
棚橋「考えに、考えた『G1 CLIMAX』だったと。今の自分に何ができるか。できないか。そして今の自分の体に感謝して、参加メンバー、見てみても、生き残るのは大変でした」
──そして今日を迎え、飯伏選手との優勝決定戦、改めてどんな相手だと感じましたか?
棚橋「もう、飯伏に対して、俺からどうこう言うレベルはとっくに過ぎてて。あとは、得意の、飯伏が覚醒した状態のままでやれるか。その分、エネルギーは使うよ。でも、それが真のトップレスラーだから。俺は、オンとオフがないから。それが自慢だから」
──かなり飯伏選手が覚醒を見せた、張り手の打ち合いがあったと思いますが、棚橋選手は一歩も引かず、むしろ前に出続けましたが。
棚橋「うん。何か、この試合を通じて、俺という人間の一部分でも、出ればいいなと思ったんです。だから、最後まで諦めませんでした」
──そして今日は、セコンドに柴田勝頼選手が姿を見せて、見つめていた中での試合でした。
棚橋「粋ですよね、やってくれることが。とっても。セコンドで、『新日本プロレスを見せろ』って言われて、その気になりました」
──武道館で、エアギターを最後に弾かれましたが、どんな場所、どんな空間でしたか?
棚橋「すっげぇ気持ちよかったですけど、エアギターが、錆びついてました。あまりにやってなくて、チューニング不足で。でも大丈夫、これからガンガンかき鳴らしていくから」
──勝利後のマイクで、「1・4ドーム、その先へ」とおっしゃっていましたが、あえて具体的な目標はおっしゃっていませんでしたが、そのあたりのビジョンに関しては?
棚橋「東京ドームのメインに戻ること、これすなわち、IWGPのチャンピオンに、もう1回、なります!」
──戦前、「Bブロックとの違いを見せていく」とおっしゃっていましたが、今日はAブロックで見せていた戦いが見られたと思いました。いかがでしょうか?
棚橋「これはね、もちろんこれからも続けていきます。ただ、今日やって、明日変わるってもんじゃなくて、半年続けて、1年続けて、チャンピオンになって、そうして、形作られていくものなんで。プロレス団体っていうものは、いわば、チャンピオンそのものなんですよ。どんなチャンピオンでも、素晴らしいチャンピオンでも、チャンピオンに、団体が似てくるんですよ」
──前回、3年前の優勝から下降線を辿っていたと言いますか(※聞いている棚橋が険しい表情に)、先ほど、苦しんでないと言われてましたが、気持ち的には追い込まれたりするものがありましたか?
棚橋「はい……ないです、ないです! ……僕のいいところは、どんなトレンドがあっても、どんな形のプロレスが流行っても、『俺は俺だ』って、『俺がやってるプロレスが面白い』って、胸を張れるところ。何でそうやって胸を張るか。それを『そうだ!』って応援してくれるファンもいる。『いや、それは違うぞ!』と言ってくれるファンもいる。熱いじゃん! 全員熱いじゃん! それが、プロレス界にとって必要なこと。だから、プロレス界に、俺が、最も必要なんです」
──昨年11月に飯伏選手とタイトルマッチを行った後、「オマエに覚悟はあるのか」と問いかけていましたが、今日の飯伏選手からそういうものは感じましたか?
棚橋「もう、飯伏の体力、気持ち、技術、何を取っても、全部俺より上だと、それぐらいの評価はしてる。あとは、ここの(※胸を指差し)心の持ちようひとつなんですよ。『俺が全員引っ張ってやる!』っていうのを飯伏に求めるのは、酷かもしれない。じゃあ、別に新日本プロレスじゃなくてもいいじゃないか。プロレス界、さらに大きなスケールで、『俺が全部引っ張ってやる』っていうことを言葉に出す。態度で見せる。それが……もうホントに言うことないと思ったけど、これで最後にします。分かってると思うから」
──最近は故障して欠場という場面も多かったですが、「試合に出るということがエースの責務」ということも言われる中で、エースとしてはそのへん、歯がゆさもありましたか?
棚橋「歯がゆいですよ。日本全国回るじゃないですか。全員の前で、元気な姿を見せたいんですよ。全力の姿をね。だからこれからも鍛錬を続けるし、日本全国のリングに立ち続けます」
──平成最後の『G1 CLIMAX』を制しましたけれども、次は平成最後の1・4ドームなんですが、やはりその最後を締めくくるのは自分しかいないというお気持ちはありますか?
棚橋「おっ! ……例年通りであるならば、東京ドームの権利証、えぇ。何てったって、よぉーく知ってますから。あとは棚橋次第。ここから下がるか、それとも、ここから上がるか、それだけです」
飯伏「(※ケニーとともにインタビュースペースまで現れるが、一人で座り込み、しばらくうなだれ頭を抱えて)言葉がないです、今はもう……ああ!(※手で顔を覆い、少しして顔を上げて)ここまで頑張った。36年で一番頑張った1ヵ月だった気がしますね。それでもまだ、まだ越えられませんか。まだダメですか。まだ……。諦めることとか、あまりしたくないですけど、ちょっと……諦めそうな自分が、います。1回諦めて、2年前に復帰してからは、『絶対に諦めない』って決めて、またプロレスをやり始めたんで、何が何でも、立ってみます。僕は諦めないです。それ以上ないです」