試合後、タイチはDOUKIに覆いかぶさりながら、大健闘を称えるように頭を撫でる。そしてミラノさんもDOUKIのそばに駆け寄り、あべみほから受け取った氷のうをDOUKIの首に当てる。ミラノさんは大の字のDOUKIの胸をポンポンと叩いて、言葉をかわす。感極まったミラノさんは場内に、DOUKIへの拍手を促す。
DOUKIに拍手が送られる中、ミラノさんは元パートナーであるタイチと言葉をかわしてから、リングを下りる。
タイチは勝ち名乗りを受けると、DOUKIのセコンドを務めた下田美馬とグータッチ。そして下田はDOUKIに駆け寄り、一言声をかけてからエプロンに下がる。
ここでタイチはマイクを握る。
■タイチのマイクアピール
「(リング中央のDOUKIを見つめながら)悔しいか? DOUKI、いや、タツヤ! タツヤ! 悔しいか? 俺からしたら、いつまでも、オマエはタツヤだ。オマエ、立派だよ。よく、ここまで来たよ、オマエ(場内拍手)。12年前か、12年前。(場内を見渡して)ちょっと長くなるけど、いいのか?(場内拍手)。明日の朝までしゃべるかもしれねえけどいいのか?(場内拍手)。
12年前、オメーはプロレスラーになりたくてよ、どうしていいか、もがいて、なんのツテか知らねえが、ミラノに頼んでよ。『メキシコでプロレスラーになりたいんです』って頭下げて。そのときちょうど、俺がメキシコにいて、ミラノがオマエを俺に託したんだよ。
あのとき、高校卒業して間もなく、オマエはプロレスラーを目指すことだけを考えて、高校生のうちにバイトで貯めた金だけ握り締めて、オレんとこ来たな。言葉も何もしゃべれない、スポーツも何もやったことのない、バイトで貯めた金だけ。夢と金だけ握り締めて、オレんとこ来たな。
まあ、それからいろいろあったよな。オマエのこと、イチからトレーニング全部教えた。プロレスラーとしてどうしていいか、全部教えてやったな。オマエといろんなとこ行ったな、メシ食って、いろんなとこ遊びに行ったな。キツい練習してな、二人でな。楽しかったな。
そしてよ、オレが一番、うれしかった、いや、よく覚えてんのはよ、俺は6月、アレナ・メヒコ、ビッグマッチ。マキシモとカベジェラ戦やって、オレは負けてハゲになった。そのとき、オマエは客席見にきてた。客席、16,000人の中で一番、大号泣してるのがオマエだったな。
会場ただ一人、オレが負けたの見て大号泣してたよ。そのまま帰りの宿舎まで、一人で泣いて歩いて帰ったらしいじゃねえかよ。周りのヤツに「ボク、どうしたの?」って声をかけられて(笑)。それからオレが宿舎に戻ってからも、オマエは大号泣してたな。悔しいです、悔しいですって、泣いてくれたな、オマエ。
そしてオレが帰るときも、玄関先で泣き崩れたな。オレがいなくなるの、寂しいって(笑)。
(場内が拍手に包まれる中、タイチが立ち上がる)。そんなかわいくて、真面目だったオマエが、俺の入れ替わりで来たYOSHI-HASHIと、ライガーと生活してから、オマエはすっかり変わった!(場内笑)。
こんなんなっちまったのは、すべてYOSHI-HASHIとライガーのせいだ!(場内笑)。むしろライガーだ! アイツが悪い! ライガーによ、毎日毎日いろいろやられたんだろ、オマエ? だから、こんなひねくれものになっちまってよ。
でも、オマエ、こうやって美馬姐もよ、みんな助けてくれたじゃねえかよ。でも、悔しかったもんな。新日本の看板があるからって、憧れのアレナ・メヒコに次から次へと出てな。オメーは、名も知らない会場で、名も知らない相手とデビューして、誰も知らねえまま、10年すごして。
そして、いま、どうだ? 堂々と新日本の『SUPER Jr.』出て、いまこうやって後楽園のメインイベント立ってるじゃねえかよ、オマエ(場内拍手)。
ほかの誰よりも、オレからしたら立派だよ、タツヤ(場内拍手)。オレにはできねえ。18で一人でメキシコわたって、それから10年間、独りぼっちでやり続けることなんて。オマエは立派だよ、尊敬してるよ、タツヤ(場内拍手)。
ミラノ、オマエも泣いてんじゃねえよ、オマエ(場内笑)。何、感極まってんだ、テメー、コノヤロー。
タツヤ、泣きたくば泣けばよい、止めはせぬ(場内笑)」
そして、タイチはDOUKIを抱き寄せ、場内は大きな拍手に包まれる。
ここでTAKAがリングインし、マイクを握る。
■TAKAのマイクアピール
「(タイチの『何しに来たんだ?』という言葉に対して)入りづらい空気にしてくれたな(場内笑)。(タイチが『じゃあ、入ってこなきゃいいじゃねえか』と言い返すと)じゃあ、オマエが締めれんのか? 締めるか、締める? たまには締めるか?(すると、タイチはどうぞどうぞと手を出す)。
『タカタイチマニア3』、たくさんのご来場、ありがとうございました!(場内拍手)。
コロナ禍になって、いろんなことがありますが、タカタイチ、スタートして、もう10年くらいになんのかな。いろんなこと、やってまいりました。今回は私事ですが、今年秋で30周年を迎えるということで、その30周年への道として、第一弾として『タカタイチマニア3』を開催させていただきましたが、今日ね、すばらしい戦い、すばらしいタカタイチで、ある意味発掘したような選手、DOUKIのすばらしい成長を見せたことによって、タカタイチの意味もあったんじゃないかなと思います。
このタカタイチ興行は、今日を持って終了します! 次やるときは、タカ、タイチ、デスペ興行にしようと思います(場内拍手)。
なんて勢いで、勢いで言っちゃったけど、言っちゃったからにはやるしかないね(場内拍手)。まあ、せっかくなんで、今日出てくれたデスペ、ザック、ボス、リングに上がってきてください!(場内拍手)。(放送席の金丸義信に)ノブさん! 酔っ払ってなければ、リングに来てください」
タイチが「酔っ払ってんな?」と声をかけると、金丸は足がよろつかせながらも「酔ってねえって!」と笑いながら否定。
ここでTAKAが「というわけで、ボズは帰っちゃったみたいですが、みんな揃ってくれました。え~、それでは! 今日、最後に!」と叫ぶと、『HAPPY BIRTHDAY』の曲が場内に流れ、鈴木がケーキを持って登場。サプライズで誕生日を祝われたあべみほは、「ウソでしょ!? 帰ったんじゃなかったですか?」と驚きつつ笑顔を見せる。
鈴木はマイクを握ると「あの~、そこの階段で転んじゃいました」とカミングアウトし、場内は笑いに包まれる。そして鈴木は「本当はココに『HAPPY BIRTHDAY、あべみほ』って書いてあったの。書いてあったんだけど、転んだら綺麗に宙を舞って(場内笑)。しかも、いま。この空気、どうしたらいい?」と語り、場内を笑わせる。
鈴木は「ということで、水を差すようなことをして申しわけないんで、ノブさんが歌います!」と金丸にムチャぶり。金丸は拒み、デスペラードにマイクを渡すと、デスペラードは高らかに「HAPPY BIRTHDAY~、DEAR、みほさ~ん」と歌う。場内は大きな拍手に包まれ、あべみほは笑顔。
だが、ここで鈴木がケーキを手に近づき、あべみほの顔面にお約束のようにケーキを押し付ける。あわれ、あべみほの顔はクリームまみれに。座り込むあべみほに、あらためて鈴木軍と客席が大きな拍手を送る。
そして、TAKAがマイクを握り、「ということで! タカタイチ! ……言えねえのか。じゃあ、タカタイチ! ニバ~ン! そしてここにいるみんな~! イチバ~ン!」と締めの雄叫び。
続いて記念撮影のあと、最後にDOUKIだけが残ると、あらためて大きな拍手が巻き起こる。その拍手中、DOUKIは下田の肩を借りて退場した。