6月26日(木)、東京・後楽園ホールで昭和と平成を駆け抜けた名レスラー、長州力の引退興行『POWERHALL 2019~New Journey Begins』が開催され、新日本プロレスから真壁刀義、石井智宏が参戦した。
長州は1974年8月8日にエル・グレコを相手に新日本プロレスでデビュー。アントニオ猪木との世代闘争や、藤波辰爾との名勝負数え歌で一世を風靡。革命戦士の異名にふさわしいエネルギッシュなファイトで人気を博し、IWGPヘビーや同タッグを戴冠した。
その後、98年1月4日に東京ドームでの5人掛けマッチで一度引退するも、2000年7月30日の大仁田厚との電流爆破デスマッチで現役復帰。その後は19年にわたり戦い続け、今回の大会でレスラー人生に終止符を打つことに。
メインで行なわれた引退試合は新日本プロレスのOB、現役が揃った6人タッグ。長州は新日本〜WJプロレスと行動を共にした越中詩郎、そしてWJからの愛弟子である石井とトリオを結成。永遠のライバルである藤波辰爾、この試合がヒザの人工関節設置手術から1年3カ月ぶりの復帰戦となる武藤敬司、さらに若手時代に自身の付き人を務めていた真壁のトリオと対峙した。歴戦の猛者が揃った試合を裁くのは長州の盟友、タイガー服部レフェリー。
場内が大きな「長州」コールに包まれる中、先発は長州と藤波。長州はロックアップで藤波を押し込むと、なんと掟破りのドラゴンスクリュー。そして早くもサソリ固めの体勢へ。だが、相手コーナー近くのため、自らほどいて距離を取る。
続いて武藤が登場。長州はフライングメイヤーから武藤の首筋にエルボーを落とす。そして石井にタッチ。
石井は武藤に逆水平チョップを連発。さらにショルダータックルでダウンを奪うが、武藤もフレッシングエルボーで反撃。しかし、石井はこれをかわすとブレーンバスターを炸裂。
次は真壁と越中のマッチアップ。ショルダータックル合戦は五分の展開となり、、越中がカウンターのヒップアタックを狙うが、真壁はかわしてラリアット。だが、越中もブレーンバスターで応戦し、ヒップアタックをヒット。
次は長州がリングインし、真壁にカウンターのエルボー。そして石井と共に真壁の両ヒザを抱え上げてマットに叩きつける。続いて長州は越中と共に、真壁に対しダブルのレッグスプリット。
次は石井と越中が真壁にダブルのショルダータックル。ここから石井と真壁が激しいエルボー合戦。石井は後退するも、相手コーナーの武藤と藤波にエルボー。
スイッチした藤波は石井をスリーパーで捕獲。さらに武藤とダブルのレッグスプリット。武藤は石井にフラッシングエルボーを見舞い、STFで捕獲。すかさず越中がヒップバットでカットに入る。
次は武藤が石井をヘッドロックで捕らえるが、武藤はバックドロップで切り返す。さらに低空ドロップキックからドラゴンスクリュー。そして足4の字固めを決める。だが、長州がストンピングでカット。
スイッチした真壁は石井にエルボーを連発。石井もエルボーをかえすが、真壁は串刺しラリアット。そして頭部にナックルを落としてからノーザンライトスープレックス。さらにジャーマンを狙うが、切り抜けた石井は逆水平チョップ。そしてロープに飛ぶも、真壁はカウンターのパワースラム。
劣勢の石井だったが、真壁をジャーマンにきって取る。続くヘッドバット合戦は石井が競り勝つ。そして、石井は長州と合体のハイジャックパイルドライバー。そして、越中が真壁にパワーボムを決めるが、武藤と藤波がカット。
越中は場外に落ちた真壁にエプロンからヒップアタック。そして真壁をリングに戻し、長州とスイッチ。長州は真壁にストンピング。そして豪快なラリアットでダウンを奪い、サソリ固めをへ。場内は「真壁」コールが発生。
すると武藤が真壁にチェーンを投げるが、これは服部レフェリーが排除。藤波がサソリ固めのカットに入り、長州に張りてをお見舞い。
長州は真壁に二度目のラリアットを食らわせるが、真壁は仁王立ち。そして、三発目のラリアットは相打ちとなり、両者ともに腰から崩れる。
ここで武藤が飛び出し、長州にシャイニングウィザード。藤波は越中にドラゴンスクリューから足4の字を決める。
真壁は長州にラリアットを決め、フォールに入るも、長州はカウント2でキックアウト。ならばと真壁はボディスラムからキングコングニーを炸裂。だが、長州はカウント2で跳ね返す。
すると真壁はもう一度キングコングニーを発射。だが、長州は意地を見せるようにカウント1で跳ね返し、場内をどよめかす。
ならばと真壁は首切りポーズから三発目のキングコングニーをグサリ。だが、なんと長州はこれも返す。だが、奮闘もここまで。
最後は真壁の4発目のキングコングニーで撃沈。真壁が恩返しともえいえるフォール勝ちを収めた。
――試合を終えたいまの心境はいかがですか?
長州「いまの心境……? 疲れましたね。ああ……。最後は、なんか頑丈だから、空回りしてましたよね。そこを越中、智宏に助けてもらいました。いいすか? そんなところです」
――リング上に奥様を迎え入れたが?
長州「ああ、もうこれが最後だと思えば。やっぱりいろいろ迷惑をかけたし、いまも心配してくれるし。まあ、こうやって元気に何事もなく(リングを)降りて来ることができたし。まあ、(家庭への)Uターンですよね」
――これからの長州さんの夢や目標は?
長州「ああ~、もう何も考えてないです。まあ、正直いって、自分ができることをやっぱり何かやっていかないといけない。まあ、ゆっくり考えますよ。いいですか、もう」
――最後は真壁選手に敗れたが?
長州「そうですね。できれば仕返ししてやろうかなと思ったんですけど、やっぱり違いますよ、みんな成長してますよ」
――最後にスリーカウントを聞いた気分は?
長州「いや~、べつにこれで終わりですねと。終わりだなって感じで。そんなあのなんか滅入ったような? 感じにはならないですね。まあね、一つ……、一つだけ、今日は源ちゃん(天龍源一郎)も来てくれたし。ウン。ホントに、源ちゃんの前で、『ああ、長州もやっぱりこれまでだな』と思われたくなくて、がんばってはみたんだけど。やっぱり、一番最大、気持ちの中に残っているのは、会長である猪木会長のことがやっぱり……。この6月26日という引退の日にちが決まってから、やっぱり常に、毎日ですね。
毎日どこかで猪木会長の顔、名前っていうのが頭の中に浮かびますね。やっぱり、45年間、ここまで成長できたのは、まあ自分自身、猪木会長とはとてつもないこの違いがあるんですけど、やっぱりリングの中で、あの方をずーっと見てきて、プロレスというものがわかってきて、『ああ大変だな、コレは』というのが、やっぱり常に感じてここまでやって来てますね。でもそれでも、とてもじゃないがやっぱりリングの中のアントニオ猪木に近づくっていうことは、とてつもなく大変なことなんだっていう。
これはホントにもう終わった時点の中で、この業界で終わって、ここまでファンのみなさんに支えられながら、やってこれたのはやっぱりひとえに、あの人と自分なりの感じ方で、『プロレスというモノはこういうモノだよ』と。いつまでやるかわからないけど、あの人は教えることはしないですけど、リングサイドから我々には……(伝わるモノがあった)。やっぱりここにいる古い記者の方は知っている通り、猪木会長の場合はあの人が会場の雰囲気を作るというか、ファンの人たちが後押しするわけで。『やっぱり凄いな』というのはあった。
それはマスコミは馬場さんと比べたでしょうけど、馬場さんも素晴らしい方でした、温厚で。ウン。でも、自分が選んだのは、プロレスの世界ですから。どっちかというと、う~ん。自分の性分としては、やっぱり猪木会長のほうが、やっぱりリングの中の、まあリングを降りてからの猪木さんの姿勢。ホントにこの人はプロレスを24時間考えてやっていると。そういうことを感じてましたよね。まあ、(自分は)到底及ばないですけど。プロレスに大事なモノっていうのは、自分なりに自分なりに考えながら、あのリングの中に打ち出してきたんじゃないかなと思うんですけど、どうなんですかね? やっぱり答えはないですから。
まあでも、本当にその偉大な猪木さんは、会場の中で一人で空気を作って、ファンを引き寄せていましたよね。ボクなんかも現場(監督)もやりましたけど、なかなかそこまでは、できなかったですね。やっぱり凄い方ですよ。ハイ、そういうことです。いいですか?」
――藤波選手とも最後の対戦になったが?
長州「たぶん、藤波さんとも……、今日はちょこっと触らせていただいたんですけど、藤波さんもどちらかと言うと、ずっと(猪木)会長に付いてきた人ですから。まあ、その表現の仕方はべつにして、彼もそうなんじゃないかと思いますね。これはボクもちょっとわからないところですよね。まあでも、ホントに最後に悩みましたよ。猪木さんを呼ぶっていうね。まあでも、猪木さんを呼んで“雰囲気作り”してもらおうかな? という部分もありますけど、まあ最後の自分の集大成として、どういう状況になるのかなっていう。でも、熱い声援でリングに、ファンの声援で、押し出してもらって感謝してますね。ハイ。以上です、ボクは。どうもありがとうございました!」
※マスコミから拍手が沸き起こる。
※石井、越中はノーコメント。
武藤「(泣きすぎて)目が腫れちゃってるよ、ホントによお……。(マスコミを見渡して)質問!」
――今回は武藤選手の復帰戦、長州選手の引退試合でしたが、あらためて振り返っていかがですか?
武藤「藤波さん、10カウントしてなかったですよね?」
藤波「ということは?」
武藤「また、復帰すんじゃないですか?(笑)」
藤波「そう」
武藤「ふつう、引退したら10カウントですよね。プロレスラーは」
藤波「今度ドラディションあるから」
武藤「じゃあ、そこで復帰させましょうよ」
藤波「そういえば10カウント、なかったね」
武藤「ふつう、引退って言ったら10カウントだよ。ということで(笑)」
――藤波選手は長州選手の最後に湧き上がる気持ちがあったのでは?
藤波「まだね、これからでしょう。でも、彼自身はまだ、気持ちは現役と一緒で燃えてますからね。いつでも戦いの準備をしておかなきゃいけないね」
――見送る立場に今回なりましたが?
藤波「俺、誰が見送ってくれるのよ?」
武藤「俺が見送りますよ、がんばって」
――武藤選手は長州選手に関していかがでしたか?
武藤「元気なのに引退されるのもったいないなって、率直に思ったけど。引退したから逆にプライベートでもっと近くで遊ぶことができるんじゃねえかなって、ちょっとした期待もありますけどね」
――先輩たちを見送る立場というのはどんな思いですか?
武藤「今日は長州さん、引退されたけど、俺はスタートだからね。ひさしぶりの試合で、仕事道具を家でパッケージするだけで息が上がっちゃったから。たいへんだったっすよ。いくら練習しても、リングの上で動くと息の上がり方が全然違うからね。逆にいえば今日がスタートで、俺自身、まだ伸びしろがあるということだから。この生涯とおして、この伸びしろを伸ばす作業をしますよ」
※ここで真壁が登場。
――最後は長州選手から3カウントを奪いましたが、お気持ちは?
真壁「気持ち? 当然だと思ってるよ、俺の中では。だって、そりゃそうだろ。年代から考えてもそうだし。敵として俺が取らなきゃ意味がねえだろ。武藤さん、藤波さん、もちろん出てるよ? 大先輩が出てるけど、そこで俺が取らなきゃ意味がねえだろって思ってる」
武藤「そこでオマエに託してよお、俺が捨て身で外に出て、それから長かったな、オマエ(マスコミ一同笑)」
真壁「ちょっとあの……(苦笑)」
武藤「(さえぎるように)俺、息上がっちゃった。長すぎて、オマエ。
真壁「たまにはそういうことがあるってことだよね(苦笑)。ご勘弁、ご容赦をお願いしたいなと思うんですけど……、なんで俺が怒られてんだ?(マスコミ一同笑)。勝ったんだよな? よし、よし!」
※藤波と武藤は先に控室へ。
――若手時代から長州選手と深い関係だったと思いますが。
真壁「本当の意味で感慨深かったのは、前に長州さんがバリバリのときに、引退したときだよね。俺はあのときの東京ドームに出たかった、スゲー出たかった。でも、俺もペーペーで実力も何もねえからさ、省かれたわけで。でも、今回はこうやって選ばれたわけで、当然だろうなって。長州さんの中で一番関係があるのは俺であり、石井であり。実力もそういうことでしょ。アイツもチャンピオンベルト持ってきたし。俺も6人タッグのベルト持ってるし。実績があって言うことがない、ということなんだよ、結局。あの人のもとを巣立った人間が、どれだけプロレス界で幅をきかせてるか。そこにすべての答えがある、ウン」
――長州選手はキングコングニーを何度やってもフォールを返しました。
真壁「あの執念はスゲー感じたよね。一発返す、二発返す、三発返す。だって、俺のキングコングニーなんて一発で決まってるんだぜ? 4発、5発も出したことねえよ。それでも返してくる、執念感じたよね。でも、あの執念っていうのはプロレス界のレジェンドじゃないと、あそこまで出せねえと思うんだよ。なぜかって、ハートだよな。やられたあと、何が残ってるよ? 俺のブン殴りラリアット食らって、もう一回食らうんだぜ? 痛いことなんかわかってる、予想なんか軽くできる。その中でもあえて返すところがよ、長州力のかっこいいところだよな。たたじゃやられねえぞっていう。俺もそうだし、石井もそうだし、いま現役の巣立った選手たちがいるよな。長州力に憧れて、この世界に入って。でも、やっぱり長州力のファイナルだと思う、今日は。これで復活したらブン殴ってやろうかと思うけどさ。これ、カットだな(笑)。そのくらいあの人の実績、スゲーものがある。だって、俺、いまだから話してやるよ。長州力の入場テーマ、俺さ、付き人で付きながら『パワーホール』が流れた瞬間、しびれたからな。ゾクゾクッて。あの感覚、付き人でさえ震え上がらす感覚。俺、四六時中会ってる先輩だぜ? それでもゾクゾクッてくる。あれってやっぱり、なろうと思ってなるものじゃなく、その人が持ってるものだと思うんだよな。だから、あの人は持ってるってこと。あの人の下について、若手時代をすごして、プロレスとはなんなのか、プロレスラーとはなんたる者なのか、それを本当に最初から全部教わったからさ。よかったんじゃないの? 最初に長州力について、怒鳴られまくってさ。まあだから、プロレスラーにもそうだし、一般のファンのかたにも夢を与えたレスラーの一人なのは間違いないよね。だからこそ、一番そばにいたから、今回は首をかっ切ってやろうと思ったよね。よくも俺の名を挙げたなって。もちろん、石井もそうだと思う。最前列だからな、新日本プロレスの。そのメンツをタッグの中に入れたってことは、どういうことになるかってわかってるだろ。それはやっぱりアッパレだよな。だから、俺の憧れの長州力でよかったなって思う。最高だったよね。ファンの人たちがどう思うかはわからねえ。だけど、俺的には最高だよな。かつての憧れだった長州力と同じリングで対峙して、最後のリングを飾るんだから。言うことないよ。プロレスラー冥利に尽きるよ……。どう? まだ2時間くらい続ける?(笑)」